第十九章 人の手の温もりそして…。[月夜のもとに]
すみれ「マスコミが来てから皆気疲れしてるんだね…。」
ナデナデ…。
すみれちゃんは子供をあやすように頭を撫で始めた。暖かく優しい手の温もりに少しずつ気分が落ち着いてくる。
すみれ「無理しないこと。いいですね?」
そう言うと手を離して授業を再開した。
……………‥‥‥。
――この学園は3つの建物を渡り廊下で繋ぐ形をしている。
元は女子高だったのだが、生徒数の不足には抗えず共学にする道を選んだ。
???「………。」
窓の外を眺めている少女とこの学園の理事長が渡り廊下にいた。
???(あれは…公園の茂みに隠れていた子か。あの子から妖魔の気配が微かにする…。でも魂自体は人間のもの。…何かある。)
理事長「草薙さん?どうかしましたか?」
理事長から話しかけられた私は、窓の外の風景から視線を戻し笑顔で答えた。
草薙「ここから見る風景が、私の以前通っていた学校のものとよく似ていて少し懐かしくて…。」
理事長「あら、そうなの?じゃあ、もう少し眺めてから理事長室にいらっしゃい。新しい担任を紹介しますから。」
そう言い残すと、鼻唄を歌いながら先に階段を降りていった。
うーん…。[日記]
良いとこなんですが、今日はこれにて終了です。明日から土曜日まで仕事ですから
では皆様お休みなさいませ
第十八章 強襲する悪寒[月夜のもとに]
すみれ「はーい、それでは日本史の授業を始めま〜す♪」
委員長「起立!礼!」
全員「お願いしま〜す!!」
委員長「着席!」
すみれ「それでは今日は飛鳥時代からですね。この時代は儒教の伝来により、宗教色の色濃く表れた時代だと言われています。厩戸皇子(うまやどのおうじ)、皆が分かりやすいのは聖徳太子ですね。彼はこの時代……。」
教室の中はすみれちゃんの声を除くと、ノートや教科書を捲る音、シャーペンやマーカーペンで書きこむ音が耳に届くくらいに静かだ。
光一朗「……ん?」
何処からか見られているような、そんな視線を感じたその瞬間。
ゾクッ…。
光一朗「!!!」
猛獣が獲物を狙うような、そんな視線を受け掌に嫌な汗が浮かび上がる。
声を発することもできないくらいの、重くのし掛かる何かの気配に顔が青ざめていく。
すみれ「……君。……き君?」
すみれ「佐伯君!どうしました?顔色悪そうですけど…保健室、行きます?」
すみれちゃんの呼び掛けで固まっていた体が動けるようになり、顔を上げた。
光一朗「…ハァ、ハァ。だ、大丈夫です。」
すみれちゃんは右手を俺の頭の上にそっと乗せた。
第十七章 台風一過そして平穏へ[月夜のもとに]
今回の情報源、職員室で話してたのを聞いてきたな。
男子C「クールかつ美人!!」
男子D「しかもお嬢様と来た!!」
転校生の女の子…ね。美人だなんて先生達が言うとは思えない…。
転校生は本当だろうが、その他はでまかせだろうと思っておいた方がいいだろうな。
ありか「ちょっと光一朗!何よその目は?」
光一朗「…別に。」
カフェ・オレのパックを手に取りながら短い言葉で返事を返す。
実はこのありかも、俺がこの街に引っ越して来た時に知り合った一人だ。
その頃から巷の噂や芸能人の恋の話を同じクラスの女子だけに止まらず、クラスが違う女子や違う学年にまで話していた。
晃「…どうでもいいけどさ、昼休み終わるぞ?」
晃は壁にある時計を指差してありかに話しかけた。時間は昼休み終了5分前を指していた。
ありか「え゙。ウソ?!ヤバい次体育だったんだ!!じゃ、今日はこの辺で!」
右手でバイバイと手を振ると隣の教室へと帰っていった。
嵐の去った教室は急にいつもの静けさを取り戻す。
ガラガラ…。
静けさを破ったのは担任のすみれちゃんだった。
第十六章 時期外れの転校生[月夜のもとに]
瓦版ていうのは江戸の頃に大衆紙として出回った今で言う新聞のことだ。一番身近な情報源として当時はかなり普及していたらしい。
ただ、この手のものはネタが無い時は胡散臭い怪物が出たとか、そういう記事が出回ることもあった。
教室に飛び込んできたのは隣のクラスの小鳥遊(たかなし)ありか。
必ず小さなメモ帳と愛用のペンを持ち歩き、生徒や先生が立ち話してるのを聞いては校内に広めている。
煙たがるヤツが大半だが、こいつの語り口調が本当らしく聞こえるため、来るのを楽しみにしてるヤツもいる。
ありか「今日のは残念ながらあの事件絡みじゃないの。今日は男子諸君に朗報を持ってきたわ。」
相変わらず身振り手振りを交えながら楽しそうに話しているように見える。俺はパンを一口頬張りながら半信半疑に耳を傾けた。
ありか「なんと、この中途半端な時期に転校生がやってくるの!しかも、元お嬢様学校の女の子よ。」
男子B「マジで?その子どんな子なの?」
お嬢様学校から転校するんだから女の子なのは当たり前だろ…。と心の中でツッコミながら話の続きを待つ。
ありか「長髪でスラッとしてて、クールな美人みたいよ。」
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