第二十六章 ミズチの策略‐不安‐[月夜のもとに]
草薙「…縛呪!!」
周囲の草木がザワザワとざわめき始め、伸びた枝や茎や蔓が魑魅魍魎目掛けて集まった。
シュルシュルシュル…。
目に見えて伸びていくそれらは、魑魅魍魎を縛り上げるように絡み、まとわり付いていく。
やがてそれは一つの大きな球体となり、さらに力を増し、音を立てながら縛り上げていく。
俺と雪乃は言葉を失い、ただ目の前に作り上げられていく緑色の球体を眺めることしかできなかった。
ギリギリギリギリ…。
草薙「…終わりだ。」
溜め息混じりに言葉を紡いだ彼女に答えるように、緑色の球体の中からさっきの小人のくぐもった声が耳に届く。
魑魅魍魎「グ、グガア…アガッ!!」
パンッ!!
緑色の球体の中で何かが弾けるような音が聞こえると、縛り付けていた草木の枝や蔓はその力を弱め始めた。
シュルシュルシュル…。
ほどけていった中から出てきたのは小石や草木の葉。先程の小人は姿形すら残ってはいなかった。
俺と雪乃は顔を見合わせ小石と木の葉を恐る恐るつついてみた。
草薙「…もう襲ってくることはない。」
雪乃(さっきの力は一体…?)
雪乃の顔だけが曇っていく。
第二十五章 ミズチの策略‐魑魅魍魎‐[月夜のもとに]
ボコボコ、ボコボコボコッ!!
地面から這い出てきたのは、人間の頭ほどの大きさをした赤黒い肌を持つ小人だった。
その小人は三人の居る周囲の一帯から出てくると、とり囲むように群がり始めた。
雪乃「きゃ!なんなのコレ?!」
足元に群がった小人は、雪乃の服の裾を掴むと這い上り始めた。それに驚き裾を振り払うが、しっかりと掴んでいるらしく落ちる気配すらない。
光一朗「くそっ!数が多すぎる!」
ズボンに群がってきた小人を蹴り上げるが、平気なのかまた集まりだしていく。
雪乃に群がった小人は腰の辺りまで登り、赤く光る目で気味の悪い笑みを浮かべた。
草薙「魑魅魍魎とは厄介なものを用意してくれたものだ…。」
慌てふためく二人を余所に、一人冷静に蹴り飛ばしては踏み潰す咲耶だけがこの小人がなんなのか分かっていた。
草薙「二人とも、この場から離れて。私に考えがある。」
そう言うと光一朗の方を向き、あの子を頼むと目で合図をし頷いた。
光一朗「雪乃、こっちだ!」
光一朗は小人を叩いて落としている雪乃の手を取り、咲耶のいる石段とは違う方向へ走り出した。
草薙「陰陽五行、木。穢れし霊に木神の戒めを…。」
ただいま〜[日記]
今帰宅しました。土曜出勤で次から次へと違う仕事にたらい回しにされてました
すごい半端な雑用に近い仕事ばかり…
あと、頻繁に様子を見に来るから気が散って集中できない
30分くらいほっといてくれたら何か感覚が掴めるのに、10分くらいで見に来て隣か背後に立って無言でじっとりとした視線を感じた1日でした
第二十四章 ミズチの策略‐罠‐[月夜のもとに]
風に靡く長い黒髪を右手でたくし上げ、ゆっくりと、無駄の無い動きで近付いてくる。
彼女は久遠寺雪乃。
俺が去年の夏に晃とありかの三人で買い物に出掛けた時に知り合った子だ。
しつこく男に言い寄られ、困っているのを助けたのがきっかけだった。
今ではありかと同じクラスになり、二人でよく出掛けるらしい。
雪乃「あら?そちらの方は…彼女さん?」
草薙「…違う。今知り合ったばかり。」
雪乃「そうなんですか?ごめんなさい。何か早とちりしちゃったみたいで…。」
早合点したことを詫びながらも、俺に向けられる視線は『残念。フラれちゃいましたねぇ…。』と言わんばかりだ。
ジャリ…ジャリ…。
雪乃の後方から全身黒ずくめの人が歩いてくる。
???「………………。」
草薙「…!!」
黒ずくめの人間は咲耶の背後を通り、すれ違いざまに何かを告げると石段を降りていった。
『今ここで戦えば他の二人に危害が及ぶ。その代わり面白いものを用意しておいた…。』
咲耶がずっと黒ずくめが降りていった方を眺めているのを変に思い話しかけようとした瞬間…
ボコッボコボコボコ…!!
地面から何かが這い出してきた…。
第二十三章 彼女が語る真実[月夜のもとに]
???「あの男は、神代学園の数名の生徒と教員関係者について調べていたらしい…。」
突然話し始めた彼女の台詞を無言で聞く。やはりこの子は何かを知っている。自分の推量だった考えが確信に変わった。
???「メモ帳に調べていた者の名前が書かれていた。お前の名前もあったぞ…佐伯、光一朗。」
彼女は真っ直ぐに俺を見据えながら名前を呼んだ。
光一朗「俺も、あんたに聞きたいことがある…。」
???「…さくや。草薙咲耶だ…。」
光一朗「じゃあ、草薙さん…。君はこの事件の何を知って、何の目的で犯人を追ってるんだ…?」
目を瞑り、何か考え事をしてゆっくりと語り始めた。
草薙「…この事件の犯人は人外の化物…。満月の夜に、今まで襲い、喰らってきた魂を使って真の力を手に入れようとする…。それを阻止し、滅するのが私の一族の…使命。」
想像以上に彼女の語った言葉は重かった。人外の化物…真の力…一族の使命。
少し困惑した頭を整理しようとした時、聞き慣れた声が耳に届いた。
???「こうちゃん?あ、やっぱりそうだ。今日はお参りですか…?」
巫女服を着た長い黒髪の少女がゆっくりとこちらに歩いてきた。
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