第三十六章 夜空の月が照らすもの[月夜のもとに]
―――――夜。
満月が煌々と夜空を照らす元、学園の校門前にいた。
咲耶と別れたあとにかかってきた非通知の電話が、ここに来た直接の理由だ。
それは今から2時間前に遡る…。
ヴー…ヴー…ヴー…。
光一朗「……ん?」
自分の部屋に居た俺はズボンのポケットから携帯を取り出した。携帯の画面には非通知の文字が表示されている。非通知でかけてくる友人はいないがそのまま放っておくわけにもいかず、通話ボタンを押した。
光一朗「…もしもし?」
【…今夜8時学園に来い…。来なければお前の知り合いが一人物言わぬ人形へと変わるだけ…。】
光一朗「ちょっと、何を言って…」
プツン。ツー…ツー…ツー…。
電話の主は用件を告げると、こちらの返事を最後まで聞く暇さえ与えずに切った。
光一朗「…名前くらい名乗れっての。言いたいこと言って勝手に切るなんて…。」
機械的な音声の電話の主に、心当たりはもちろんない。
光一朗「……今夜8時学園に来い…か。」
携帯を握り締めたまま味気無い待受画面を見つめた。
言い表せない不安も感じたが、電話の言葉が気になる。
【物言わぬ人形へと変わるだけ…。】
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