第三十二章 狙われた犠‐絆‐[月夜のもとに]
飲んだビールの空き缶やおつまみの包装を片付け、酔い潰れた姉を隣の自分の部屋に寝かせた。
私は炬燵を少しだけ動かし、スペースを作ると布団を敷いて自分の寝る場所を作った。
時計を見ると、時間は既に1時を回っていた。
すみれ「…今日はなんだか疲れちゃったなぁ…。ふわぁ。」
学園のことに事件のこと、そして姉のこと。
考えれば考えるほど、疲れとアルコールの影響で深い眠りへと落ちていく。
…………‥‥‥。
シュルシュルシュル…。
キィ…パタン。
ドアを開け、すみれの寝ている部屋に入ってきたのは目を赤く光らせた楓だった。
楓?『…よく眠っている…。あの娘から受けた傷を癒すにはまだ力が足りない…。』
普段の楓の声とは違い、機械で作られたような男性の声も重なっていた。
楓?『人間の生命力を使って傷を治せば、後は満月の夜を待つのみ…。』
眼下にいる安らかな寝顔をしたすみれを見据えたその時
楓?「…すみれ、こんな化け物に騙されるような弱い姉でごめん…ごめんねぇ…。」
赤い目から獣の持つ殺気が薄れ、いつもの楓の声に戻る。流れ落ちる涙と震えた声が弱々しくなっていった。
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