第三十章 月満ちるまで…。(前編[月夜のもとに]
すみれちゃんは咲耶と一緒に帰路を歩いていた。
夕日に染まる道を二人の影が右に左に揺れている。
歩きながら二人はいろんな話をした。前に通っていた学園のこと、好きな科目・嫌いな科目、好きな食べ物・嫌いな食べ物、芸能人の話など…。
初めはあまり話をしなかった咲耶も最後には笑顔を見せるようになっていた。
楽しい時間は経過するのは早いと言われるが正に今それを実感していることになる。
やがて咲耶は自分の家が近付くと、すみれちゃんと別れ道で挨拶をして独り家を目指す。
咲耶と別れて20分くらい経っただろうか、すみれちゃんもまた自宅のそばまで来ていた。
自宅の前には黒い服を着た女性が一人立っている。その女性の後ろ姿を見るなり声をかけた。
すみれちゃん「…お姉ちゃん?」
黒い服の女性「!! やっほー、元気?」
少し焦げ茶色に染まったショートボブの女性が、優しい笑顔で振り返った。
すみれちゃん「楓お姉ちゃん…また?!」
楓「え、えへへ…。」
彼女は片手にコンビニの袋を持っていた。中身は多分お酒だ。最近何か嫌なことがあると気分転換をしに私の家にやって来る。
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