第二十章 戦う決意は固く[月夜のもとに]
階段を降りていく理事長の背中を見送ると、瞼を閉じてもう一度窓の外へと顔を向け、ゆっくりと瞼を開ける。
草薙(…この街に巣食う妖魔は必ず、私がこの手で…。)
決意の眼差しは雲一つない青空を見つめ、右手には自然と力が入ってゆく。
草薙「…もう二度とあんな思いはごめんだから…。」
そう言葉を紡ぐと渡り廊下を歩き始めた。
パタパタパタ…。
渡り廊下から離れて階段に差し掛かる時、鳥が飛び立つ羽音がどこからか聞こえてきた。
草薙「理事長先生、待たせちゃってるかな…。」
私は階段を降りると、理事長室を目指した。
…………‥‥‥‥。
パタパタパタ…。
???「…あの程度のキズを癒すのにこんなに時間が掛かるなんて…。あの女、次会う時は必ず…!」
まだ塞がらないキズからは赤い血が滲み出ている。顔は焦りと苛立ちに支配され、目は血走っている。
パタパタパタ…ストッ。
屋上の手摺に一匹のカラスがとまった。
???「……何?私の妖気を探ってこの学園にやってきただと?フフ…いいでしょう。決着をつけましょう…。覚醒した私の本当の力、その身に刻み付けてあげますよ…。」
第十九章 人の手の温もりそして…。[月夜のもとに]
すみれ「マスコミが来てから皆気疲れしてるんだね…。」
ナデナデ…。
すみれちゃんは子供をあやすように頭を撫で始めた。暖かく優しい手の温もりに少しずつ気分が落ち着いてくる。
すみれ「無理しないこと。いいですね?」
そう言うと手を離して授業を再開した。
……………‥‥‥。
――この学園は3つの建物を渡り廊下で繋ぐ形をしている。
元は女子高だったのだが、生徒数の不足には抗えず共学にする道を選んだ。
???「………。」
窓の外を眺めている少女とこの学園の理事長が渡り廊下にいた。
???(あれは…公園の茂みに隠れていた子か。あの子から妖魔の気配が微かにする…。でも魂自体は人間のもの。…何かある。)
理事長「草薙さん?どうかしましたか?」
理事長から話しかけられた私は、窓の外の風景から視線を戻し笑顔で答えた。
草薙「ここから見る風景が、私の以前通っていた学校のものとよく似ていて少し懐かしくて…。」
理事長「あら、そうなの?じゃあ、もう少し眺めてから理事長室にいらっしゃい。新しい担任を紹介しますから。」
そう言い残すと、鼻唄を歌いながら先に階段を降りていった。
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