第五章 守るもの、守られるもの[月夜のもとに]
マスコミの男が去り際に見せた背中に、俺達は親の敵を憎むような目付きで睨み付けた。
女の先生「ほら二人とも、急がないと遅刻になっちゃいますよ?」
そう言いながら先生は、右手の人差し指を立ててこちらに向けて微笑んだ。
この先生は俺達のクラス担任の朝比奈 菫先生。今年先生としてこの学園に来たばかりで、年齢はあまり離れてない上に身長も高くないから『すみれちゃん』って愛称でみんな呼んでいる。
菫「今のヒトに関しては先生達でなんとかします。だから君達は気にしないでしっかり勉強してくださいね?」
晃「了解であります。んじゃ行こうぜ光一朗。」
晃は菫先生に、刑事物のドラマで良く見る敬礼をまねすると、腕を下ろしながら俺の方へと目を向けた。
光一朗「ん?ああ…。」
気にするなと言われて、気にならないと言うことはまず無い。
でも今ここで考えて解決できるような問題でもないのは確かだ。
親の脛をかじりながら社会に出る為に勉強している子供の言葉が、ああいう大人に易々通用するとは思えない。
大人に守られなければ自分すら守れない…。そんな自分に歯痒ささえ感じた。
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