るくさんの日記
るく
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11月4日 23:31
第三十四章 時満ちて‐ミズチ覚醒‐[月夜のもとに]
学園には今まで以上に増えたマスコミが説明を求めて押し寄せたらしく休校の連絡が入った。

保護者とマスコミの対応で授業どころじゃないんだろう…。

ヴー…ヴー…。

鞄に入れていた携帯に着信が来たらしく、唸るような振動がそれを知らせる。

光一朗「…この番号は…。」

携帯の画面に表示された番号はありかや晃、雪乃のどれとも一致しないものだ。

知らない番号に出るのは正直気乗りしないが、鳴り続けているのは用があるからだろうと通話ボタンを押す。

光一朗「…もしもし?」

???「…遅い。やっと通じたか…。」

電話の向こうから聞こえてきたのは落ち着いたトーンの女の子の声。草薙咲耶だ。

光一朗「…なんで君が俺の携帯知ってるんだ?」


草薙「学園に電話したついでにお前の番号を聞いた。話したいことがあるからな…。」


ちょっと待て。そんな簡単に個人情報教えていいものなのか…?それとついでにって…。

草薙「今から昨日の神社に来い。話はそこでする。じゃ…。」

プツッ、ツーツー…。

なんなんだよ…。話があるから電話かけてきたくせに、一方的に用件言って切りやがった…。

光一朗「昨日の神社…か。」
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11月3日 13:23
第三十三章 崩れ行く平穏[月夜のもとに]
―――――翌朝。

光一朗「…ふわあぁ…。おはよぅ。」

昨日立て続けに起きた出来事に脳がついていけず、夜もなかなか寝付けなかった…。

その結果がこのいつも以上に眠そうな欠伸だ。

階段を降りて、洗面所で身支度を整えるとキッチンに向かう。

キッチンでは目玉焼きとウィンナーを焼いているいい臭いが、寝起きの脳を刺激するように出迎えた。

光一朗の母「おはよう。いつもの出来てるから食べなさい。」

ダイニングテーブルには目玉焼きとウィンナーに、トーストとコップ一杯の牛乳が置かれている。

トーストを食べながら何気なくつけた朝のニュースが耳を疑うようなことを告げた。

キャスター『ニュースです。本日未明、神代町のアパートで女性の変死体が発見されました。女性はこの部屋に住む小日向すみれ高校教師(23)の姉の楓さん(26)とみられ…。何らかの事情を知っているものとして、この部屋の持ち主である小日向すみれさんを探し話を聞く方針です。続きまして………。』

ボトッ…。カチャン。
食べかけのトーストが口からずり落ち、音をたてて皿に乗っかった。

光一朗(…なんで、何が起きてるって言うんだ…?先生…。)
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11月2日 15:41
第三十二章 狙われた犠‐絆‐[月夜のもとに]
飲んだビールの空き缶やおつまみの包装を片付け、酔い潰れた姉を隣の自分の部屋に寝かせた。

私は炬燵を少しだけ動かし、スペースを作ると布団を敷いて自分の寝る場所を作った。

時計を見ると、時間は既に1時を回っていた。

すみれ「…今日はなんだか疲れちゃったなぁ…。ふわぁ。」

学園のことに事件のこと、そして姉のこと。
考えれば考えるほど、疲れとアルコールの影響で深い眠りへと落ちていく。


…………‥‥‥。


シュルシュルシュル…。


キィ…パタン。

ドアを開け、すみれの寝ている部屋に入ってきたのは目を赤く光らせた楓だった。

楓?『…よく眠っている…。あの娘から受けた傷を癒すにはまだ力が足りない…。』

普段の楓の声とは違い、機械で作られたような男性の声も重なっていた。

楓?『人間の生命力を使って傷を治せば、後は満月の夜を待つのみ…。』

眼下にいる安らかな寝顔をしたすみれを見据えたその時

楓?「…すみれ、こんな化け物に騙されるような弱い姉でごめん…ごめんねぇ…。」

赤い目から獣の持つ殺気が薄れ、いつもの楓の声に戻る。流れ落ちる涙と震えた声が弱々しくなっていった。
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11月1日 18:47
第三十一章 月満ちるまで…。(後編[月夜のもとに]
少し肌寒くなった陽気に合わせて炬燵と電気カーペットのスイッチを入れ、炬燵の上には数本の缶ビールと、おつまみを適当に並べた。

楓「アイツったら酷いのよ?あたしが誕生日に買ってきたケーキ食べて何て言ったと思う?!」

あれから缶ビール二本を開け、すでに出来上がっている姉は愚痴り始めた。

すみれ「何て言ったの…?」

私は柿の種とバターピーナッツをポリポリ食べながら相槌を打つ。

楓「うまい。けど…もう少し甘い方がいいな…。」

声を低くし、声色や仕草を真似しながら話を続ける。

楓「だったら自分で買ってこいっての!!」

カンッ!!

音を立てて炬燵の台の上に缶を置いた。そして何かを思い出したのか、声のトーンが変わる。

楓「昨日母さんから電話来てさ…。若くないんだからいい人見つけて家庭をもったら?って…。」

すみれ「お姉ちゃん…。」

そろそろやめにして休んだら?と言おうとした瞬間

楓「うぷ。おトイレ借りるね。」

バタバタとトイレの方へと駆け出していった。

すみれ(…大丈夫かなぁ…。)

困り顔をしながら缶ビールに口をつけた。

ドア一枚隔て、寄り掛かる人影がニヤリと笑った。
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10月24日 22:53
第三十章 月満ちるまで…。(前編[月夜のもとに]
すみれちゃんは咲耶と一緒に帰路を歩いていた。

夕日に染まる道を二人の影が右に左に揺れている。

歩きながら二人はいろんな話をした。前に通っていた学園のこと、好きな科目・嫌いな科目、好きな食べ物・嫌いな食べ物、芸能人の話など…。

初めはあまり話をしなかった咲耶も最後には笑顔を見せるようになっていた。

楽しい時間は経過するのは早いと言われるが正に今それを実感していることになる。

やがて咲耶は自分の家が近付くと、すみれちゃんと別れ道で挨拶をして独り家を目指す。
咲耶と別れて20分くらい経っただろうか、すみれちゃんもまた自宅のそばまで来ていた。

自宅の前には黒い服を着た女性が一人立っている。その女性の後ろ姿を見るなり声をかけた。

すみれちゃん「…お姉ちゃん?」

黒い服の女性「!! やっほー、元気?」

少し焦げ茶色に染まったショートボブの女性が、優しい笑顔で振り返った。

すみれちゃん「楓お姉ちゃん…また?!」

楓「え、えへへ…。」

彼女は片手にコンビニの袋を持っていた。中身は多分お酒だ。最近何か嫌なことがあると気分転換をしに私の家にやって来る。

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