第十四章 疑いの根はより深く[月夜のもとに]
光一朗「あの女の子はたぶん、犯人に繋がる何かを知ってる。あのマスコミもそれを何処かで知って、犯人に襲われたんじゃないかな…。」
自分なりに考えた答えを晃に話してみる。
晃「仮にそうだとしてもだ…。その女子高生が本当に犯人じゃないという証拠はないんだろ?
人目につく行動だって、もしかしたら容疑者から外れるためにした偽装工作かもしれない…。」
光一朗「……うーん。」
話をしながら坂を登り終わると、そこには昨日よりも多い数のマスコミが押し寄せているのが見えた。
これに対し学園側は、マスコミが校門に近づかないようにと校門の両脇に立ち、生徒に挨拶をしながらマスコミに睨みを効かせている。
晃「……ここはいったいどこの国の紛争地帯だ?」
溜め息混じりに、マスコミVS学園側の睨みあいを前線に喩えて言った。
マスコミのオッサンが話していた言葉が脳裏を過る。
『ここの生徒が暴力や恐喝を受けていたってのを聞いてね…。殺してやりたいなんて考えてもおかしくないんじゃないかな…。』
光一朗(…この学園の関係者をあのマスコミは探っていて、事件に合ったのだとしたら…疑われても仕方ないってことなのか…?)
第十三章 廻る感情の違和感[月夜のもとに]
――――翌朝。
学園へと続く坂道を上る。いつもしていることだから意識することなく足は進んでいく。
晃「おっす。今日は眠そうじゃないな…?」
光一朗「………。」
晃「オイ!起きてるのか?!」
パンパン!
小気味良い音を立てながら背中を叩かれた。
光一朗「…あ。晃か、おはよう。」
晃「大丈夫か?しっかりしてくれよ、相棒。」
光一朗「…あぁ、悪い。考え事してた。」
晃「恋の悩みか、それとも人間関係か?話すと案外すっきりするかもしれねーぞ?」
そう言いながら、あるCMの東幹久ばりに白い歯を見せながら笑っている。
光一朗(無駄に熱いお節介焼きめ…。)
光一朗「実はさ、昨夜見たんだ…。あのマスコミの男が、見たことない制服の女子高生に抱えて運ばれていたのを…。」
晃「なんだそれ…。新手の都市伝説か?……待てよ、その女子高生が事件の犯人だとしたら…。」
光一朗「だったら殺してそのままにする方が賢明だ。場所は人目のない公園なんだから…。」
俺は間髪入れず矛盾を指摘する。
光一朗「それに、わざわざ目につきやすいことをするなんてリスクはしない…。」
頭の中の霞を払うように考えをまとめる。
第十二章 邂逅と疑惑[月夜のもとに]
…………。
公園の中から微かに何かの音が聞こえてくる。
光一朗「ん?何の音だ?」
暗闇から聞こえてくる妙な音に、少しの恐怖感と強い好奇心が沸いてくる。
好奇心から、公園入り口のそばにある茂みに隠れ、音の正体が来るのを待つことにした。
ズルズル…。ズルズル…。
何か引き摺っているような音だった。
明かりのない闇の中から響く音は徐々にこちらへと近付いてきている。
ズルズル…。ズルズル…。
???「…………。」
微かにだが人らしき声も聞こえてくるようになった。まだ何を言っているのか聞き取れない距離だ。
ズルズル…。ズルズル…。
???「よいしょ、よいしょっと。」
人の声がはっきりと聞こえるようになった。声からして若い女性のようだ。
ズルズル…。ズルズル…。
公園の中にある明かりの下に、声の主と引き摺っているものが入り、姿が見えた。
声の主は俺の学校とは違う制服を来た女の子だった。見た感じ高校生で同じ年頃に見える。引き摺られていたのは朝に会ったマスコミの男だった。
光一郎「(あのオッサン、気失っているのか?何かに襲われたとしたら…今抱えてる女の子は、まさか…。)」
第十一章 救われた命[月夜のもとに]
倒れたまま動かない男の手首に指先を当て、脈の有無を調べた。
???「…ふぅ。気を失っているだけか…。」
全身から緊張が抜け、その場にペタンと座り込む。
牙から毒を体に入れられたわけではないので、短時間で命に関わることはないだろう。
ただ、全身の骨がどうなっているかはわからない。一度病院に連れていくべきなのだろうと判断し、男の両脇から腕を入れ胸の前で指を組む。
???「ん、よいしょっと…重いな。」
その体制からゆっくりと立ち上がり、体を起こした。
ズルズルズル…。
男の方が上背がある為、必然的に足はだらしなく引き摺られていく形になる。
誰か一人でも居れば力を借りて二人で運ぶこともできただろうが、居ないものに期待はするだけ損なこと。
???「よいしょ…よいしょ…。」
ズルズル…ズルズル…。
ゆっくりとだが確実に公園の出口へ向かっている。
……一方、公園近くの道路では…。
光一朗「まったく、家帰ってすぐにお使い頼めばいいのにさ…。」
スーパーに買い物を頼まれて、帰り道一人愚痴を溢している。
公園前に差し掛かると公園の中から何か音が聞こえる…。
第十章 白蛇の妖魔と謎の少女[月夜のもとに]
ザザザザザザザ…。
芝生の上に落ちていた葉が風を受け宙へと舞い上がる。
???「斬葉(ざんよう)!!」
ヒュオオオオォォォ!
地面を這うように風が駆け抜けていく。10枚程の葉を伴って…。
ザシュ!ザシュ!!
風と共に舞い踊る葉は、刃物のような鋭い切れ味を持ち白蛇の妖魔へと襲い掛かった。
キシャアアアアアアアアァァァァァァ!!!
襲い掛かる数枚の葉からの蹂躙に悲鳴を上げ、この場から逃げようと男を締め上げていた力を弱め、捨て去るように後退りをした。
ドサァ!!ズルズル…ズルズル…。
???「人間に化けていたとはな…。道理で妖気を探るのに苦労するわけだ…。」
コツン…コツン…コツン…。
???「…ミズチ。」
暗闇から姿を表したのは一人の少女だった。見た限り武器となるようなものは持ってはいない。
ミズチ「シャアアアアアアアアアァァァァァ!!」
ブオオォン!!
尻尾を勢いよく振り払い、風を起こすことで砂埃を巻き上げた。
少女「くっ!」
反射的に左手で顔を守るように翳す。巻き上げられた砂埃は徐々に晴れ、目の前にあるのは倒れた男の姿だけだった。
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